早稲田大学大学院、経営管理研究科(MBA)への入学を考えている場合、筆記試験と面接試験の両方を突破する必要があります。今回は私が面接で受けた質問と回答について公開します。より多くの方に参考になりましたら幸いです。
前提情報:早稲田大学大学院の入試と難易度
早稲田大学大学院、経営管理研究科(MBA)への入学を考えている場合、筆記試験と面接試験の両方を突破する必要があります。筆記試験が設けられている大学はそこまで多くないため、別途対策を求められる点が追加の負担となります。
早稲田大学大学院 夜間主総合コースの倍率と受験層
実際のところ、早稲田大学大学院のMBAは倍率が高く、受験層もエリート揃いであるため難しいと思います。
倍率は低い年でも3倍、高い年で5倍を超えている点、また受験層は大手企業社員やCxO、医師弁護士等トップ士業である点などから熾烈を極めると思っていただけるとよいかと思います。
試験を受けた時点で私は認識できていなかったのですが、皆さんのライバルはそのような方々になると思って臨むと良いかと思います。
また、指導教員に直接聞いたところ年々急に倍率が上がっているということだったので、受験は先延ばしにしない方が入学の可能性は上がります。なお、私が修了した2022年の夜間主総合コースの倍率は2022年程度で5.3倍とかなり高くなってしまいました。
人気の背景と筆者の状況
早稲田大学の経営管理研究科はMBAとして運営されている大学院の中でも国際認証の保有が多く、さらに国内でのプレゼンスを踏まえると他を圧倒する一強状態であると言わざるを得ません。Ph.Dを志す学生が受験を検討することはありませんが、MBAを志す学生は自然と志望校として検討しているのが現状です。
早稲田大学大学院を志望する学生が他に検討するとしたら、一橋大学大学院になると思います。私が説明会やオープンキャンパスに参加した際も、実際の学生の方に聞いたところ一橋大学を併願する方が多かったです。なお、私の感覚では国際認証の保有数からして一橋大学大学院は検討しませんでした。
私は実際にここでの筆記試験と面接を25歳時点(夜間課程。学部卒+社会人経験3年の受験資格としては最年少)で突破した経験から、実体験を踏まえて問題の解説を行います。この記事では面接について書いていこうと思いますが、あくまでも若手が書いた記事としてお読みいただくと良いかと思います。また、回答はあくまでも要旨となります。
若手はおそらく合格しやすい傾向にありますが、最も合格しやすいアドバンテージを持っている属性は大手企業からの派遣です。企業派遣で落ちた例を見たこと・聞いたことがないため、どうしても合格したい場合は企業派遣経由で受験しましょう。
面接試験の解説(された質問と対策、その解説)
試験当日の状況
まず、面接会場ですが早稲田大学の本キャンパスまで行く必要があります。高田馬場からバスで行くか、東京メトロ東西線の早稲田駅から歩くかのどちらかになりますが、JRの最寄駅からは遠いので時間には余裕を持って行くと良いかと思います。
形式は30分ほどになるかと思います。私の場合は教授の方3名(もちろんどなたかは知っていますが、公表は控えます) vs 私 という構図での面接となりました。他の方にもどうだったか聞いて回ったのですが、2 vs 1の方もいらっしゃいました。よって自分対複数名の教員となる旨ご認識いただければ幸いです。
面接で聞かれた質問と解説 志望理由
設問
- 志望理由について教えて下さい
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アカデミックな理由とビジネス的な理由がそれぞれあり、うまく両軸を実現できそうと考えているから。
まずはビジネス的な理由から説明したい。結論から言うと、最上位レイヤーになることで日系企業に顧客志向を取り戻せるような活動をしたいから。
現在は大手の通信会社にいるが、例えば通信会社や携帯電話であればわかりにくい料金プランや端末の費用割賦など、新卒の自分どころか誰がどう見ても分かりづらい。このような誰でもわかるレベルの問題が多数放置されており、もやもやを抱えていたり、そもそも利用できないユーザーも多い。
このように単純な問題を会社の誰もが放置しており、修正しようと手や声を上げてもむしろ変な扱いをされるのが伝統的な日本企業感が強い。若手が失望して退職するのは当然である。国内携帯電話のシェアが減ってiphoneを購入するユーザーが多いのは顧客志向の欠如。
私も仮に給与が良かったとしても顧客志向という最低限の要件を満たしていない企業で働きたいとは思えないため、仕事の傍ら知人とともにブロックチェーンを通じた非営利組織を立ち上げた。
ここでは決済やIT技術を活用した貧困・障害のある方の支援をメインに活動しており、真に人のために働く面白さを体感できているが、いかんせん社会からは注目を浴びることができていない。そのため、ここで引き続き経営陣としてやっていくか、キャリアチェンジを行い顧客志向で活動している方と働くかを迫られている状況。
しかし、どの道を目指すにしてもスキル・社会経験や知識がまだ足りておらず、普通に大手企業で働く同年代よりも圧倒的な差をつけたい。今の自分には体力や行動力はあるようだ。そのため前述のようにNPOを立ち上げるなど具体的なアウトプットは可能だが、体系的なインプットが足りていないせいで詳細を詰めてグロースさせていくのが難しいと考えがまとまった。
そこで、短期間で集中的にインプットを行う場に入ることで、自分の能力にレバレッジを効かせられると考えている。幸いWebサイト売却等の個人的な活動により少しキャッシュがあるため、ただ働くだけではなく学びに行くという選択肢が取れる。ただ転職するだけであれば何もない人間のままだが、経営的な知識を入れた上でのキャリアアップならばより確率が上がる。今はこのような感じで試行錯誤しているが、確実にトップレイヤーになり顧客志向を突き詰めた会社を運営していきたいと思っている。
次にアカデミックな理由である。もともと経済学で学んできたことを活かし続けている。例えば新卒で職についたことに対しては競争の原理を活かしている。高度なスキルがなければ低賃金、長時間労働であるため、その逆を意識しWebサイトの構築やサーバーの運用に関する知識を文系ながらつけたところ、同業界の会社からはほぼ全て内定が出て必要とされた。
学ぶことのHowはIT知識なので、世間はITの知識を一元的に重要視しているし、採用のトリガーもIT知識ではあるが、実際本質はWhyである。Whyがわかれば、時代に即したスキルを必要なだけ学べるのだ。本来ITはツールであり、一時しのぎに過ぎない。
経済学・経営学は実学ではないとナメられているが、その真の力は修めた者にしかわからないことを知っているし、自分は経済学の力だけで一挙一動を決め生活しているといっても過言ではない。この恩恵を理解している一人の人間として、より専門的に学ぶことを継続していきたい。もしチャンスがあればこの恩恵を研究職などで次の世代にも教えていきたい。
解説
まず、問題の出題意図を分析します。私が思うに、下記は最低限説明を行う必要があります。
なぜMBAを目指す必要性が出たのか、MBAという看板をどう使って何をするのかを具体的に知り、入学させるべきか確認したい
大学院ではどのようなトピックに興味を持ち研究して行くつもりか、それを仕事にどう活かすのかを知り、要望に応えられるか、担当教授がいるかどうかを知りたい
志望動機は強い、志望度は高いという根拠
これらの出題意図については、平たく言えば「大学院にマッチする人物か」を判断するための質問です。よって正直かつ本音ベースで喋るのが一番利益的ではないかと思います。というのも、自分の専攻もしくはやりたいテーマとマッチする指導教員がいない場合もあり、他の大学院を目指した方が良いケースもあるためです。
その場合、無理やり突破しようとしても厳しいと思うので、無理せずに自然体で挑むのがいいと思います。私の場合、回答に記載したように試行錯誤をした結果大学院に行くのがベストだと思っていたので、それをそのまま伝えました。
1点目のMBAを使う必要性については、明確にキャリアアップを掲げています。しかしながら、アカデミックな道もほのめかすような発言を行っています。キャリアアップのために日頃何をしているのかを詳しく臨場感が伝わるように、それでいて実力を一定示すことを意識しながら喋りました。
2点目について、私の場合は経済学(マネジリアル・エコノミクス、経営経済学、経済学原論に興味)を学んでいた点が根拠になり、そのまま専門の延長であることから、詳細な説明は不要でした。ただし、大学時代の専攻や職種が経営からかけ離れている場合は別途説明が必要だと思います。
3点目は、1,2点目をどれだけ具体的かつイメージしやすく説明できるかが鍵になるのではと考えています。
志望動機は一般的なものではなく、その人にしかない唯一無二のストーリーを説明でき、それが選考基準にマッチしている状態を意識するのが一番だと思います。そうするとわざわざ志望動機を3Cで説明しなくても良くなると思います。教授陣はフレームワークへの当てはめは多分聞き飽きているので、上記のような唯一無二で驚愕させたいと思っていました。
志望理由のポイント
・自然体で話そう
・フレームワークなどありきたりな内容は教授陣は聞き飽きているので、唯一性・権威性を持って教授陣を驚かせよう
・ベースとなる経済学・経営学は日頃から興味を持って勉強・研究し、興味のある分野についてはジョークを言えるレベルになるまで知識と経験を積んでおく
・何ができる人間なのか、どういったキャラクターなのかを理解してもらおう(筆者の場合はWeb*起業のスペシャリストではありつつも、アカデミアの側面を残すようなパーソナリティをアピールしました)
最近読んだ本は?日頃のキャッチアップはどうしている?好きな企業事例などあれば教えてほしい
設問
- 最近読んだ本は?日頃のキャッチアップはどうしている?好きな企業事例などあれば教えてほしい
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率直に言えば日頃の生活で本は読んでいない。読んだ本で印象に残っているのは資本論など社会経済学系の本。資本論は結局世の中はどうなるのかへの考察が経済学的アプローチの集大成であり、良さを感じている。他には孫子の兵法といった、物事の判断指標を提供するような戦略的コンテンツが好きでよく見ている。各論ではなくて原論(ルーツ)を最も重視している。
また日頃のキャッチアップは実際の企業活動について調べるのが好き。(ここで企業事例について質問を受ける)
例えば2000年台のxiaomi。当時中国ではスマホがブームになり始めており、ほぼ全員の中国人が間違いなくiphoneが欲しかったが、持っていない時代のこと。この時代にxiaomiはiphoneを徹底してパクリ倒し、わずか2~3年でスマホトップ企業に上り詰め、今でもそのまま居続けている。この話の面白さとして、彼らは綿密に経営戦略を立てたりプロダクトやマーケ施策の設計を頑張ったわけでもなく、そういうのは後付けでただiphoneを真似しただけであったから。例えばwebサイトの画像にはappleのサイトから無断で拝借した画像があったりするし、それを巡って訴訟問題にもなったりした。パクっただけで世界最高峰というのは痛快であり、今までにない面白い事例であることは間違いない。しかしながら、彼らはスピード感においては他の追随を許さなかった。さらに、他の企業よりもうまくiphoneをパクった。その勝つための2要素をうまく捉えて中国大陸を制してユニコーンとなった様が最も好きな要因である。
経済学的に解釈するとまた面白い。例えば中国人は本当のiphoneが欲しかったわけではないこと。輸入・販売業者になるのではなく、それっぽかったら偽物でokだった点を発見したxiaomiは本当に素晴らしいと思う。でも、xiaomiはなるべくiphoneに寄せにいき、その交点はiphoneではないmi2というプロダクトだったのだという点が非常に経済学的。需要と供給は量だけではなくプロダクトの本物度、つまり深度に対してもあるのだとわかったし、需要過多は供給ではなくパクリでも解決できるのだと学べたと思う。
解説
最初は若干圧迫気味といいますか、プレッシャーを感じていた面接のはずが、このあたりでは教授陣が声を上げて笑っていました。この後もマルクス経済学や経済数学を活用したジョークなど、とりあえず言いたいことを展開しました。関連する学問を使ってジョークを言えるようになるほどまで解像度を高めておいたのがここで大きく効いています。
この問題の意図は主に下記です。
学習習慣があるか、また学習内容は自分のキャリアから逆算して組み立てられているか、学習などに抵抗がなく大学院でやっていけるかを判断したい。
日頃から学んでいる分野や無意識に考えていることがあればそれを共有してみるのが近道だと思います。さらに、それが課題感であるとなおわかりやすくてよいかと思います。
私の場合は考えている課題は原論に近く一言で終わるような内容ですが決して一言では伝わらないので、面白さを交えながら伝わるように努力しました。
しかしながら、さすがの大学教授といったところで、経済学の話は一般人にはわからないような専門的な話をしても通じますし、もし受験をされる方がいらっしゃったら経営学・経済学のアカデミックな話を持っていける方はぜひアウトプットしてみてください。彼らとの議論は面白いと思います。ちなみにここの回答は一般の方が読んでも大丈夫なように、専門性を除いて記載しています。
忙しそうではあるが、大学院を継続して通学できるのか (継続性・学生生活に関する質問)
設問
- いろいろやっていて忙しそうではあるが、大学院を継続して通学できるのか、実際にやっていくとしたらどんな感じに取り組む?他に検討した大学院は?例えば慶応とかは興味なかった?研究するのが好きそうなので、いい大学院は他にも結構あったと思うが。
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◆時間の捻出について
土日は確実に休みなのでその時間を当てたい。学生の方に聞いた感じだと、確か土曜日やセメスター間の数日は終日授業を入れられると思うので、活用したい。
平日は業務都合で難しいかもしれないが、職場での調整はフレックスであり問題ない。あと自分は若くて子供もいないので一人の時間が多く、相対的な学習時間も多いと思う。
◆どう取り組むか
もともと専門の延長でもある。いろいろ志望理由は言ったもののシンプルに経済・経営をもっと勉強したいモチベーションが大きい。
目的意識だけであれば他の適切な選択肢はより多いと思う。個人としては趣味・ライフワーク的要素も大きく、目的意識だけにとらわれず柔軟に楽しくやりたいし、平均年齢が高いのもあるので若手としての斬新なコメントを出して大人達を驚かせていきたい。◆他に検討した大学院
一橋大学の経営管理研究科を検討したが受験していない。理由は国際認証などを踏まえたプレゼンスを重視しており、また通学のしやすさなど総合的に加味すると早稲田大学大学院一択となった。慶應義塾大学は昼間が主なプログラムであるため検討しなかった。個人的にも、いずれもいい研究科であることは間違いないとは思うが。
解説
基本的にQに対してAを返す、シンプルな解法でOKだと思います。やはりMBA Candidateとなるとついやる気のあまり120%を返そうとしてしまいますが、それはここではやらなくても大丈夫です。
ここはシンプルに聞かれたことに対して適切な回答を簡潔に述べるスタイルがベストだと思います。忙しさに対してどう対策を行うのかを説明しましょう。
まとめ
以上です。私は日頃話したかった内容や頭の中で考えている内容をそのまま正直に共有しただけなので、特に対策は行いませんでした。こんな感じの人間なので、変に対策を行ってしまうと逆に支離滅裂になってしまう可能性すらあると思います。また、筆記試験が非常にうまく行った実感があり、120点の回答をしてしまった自信があったためすんなり合格となりました。筆記試験は別の記事で解説しようと思います。
しかしながら、人によってはかなり入念な対策を行ったり、中には予備校に通ってまで落ちた方もいるとなると、やはり適正の問題な気がするため、落ちたからと言って一喜一憂する必要はないと思います。
ただし、おすすめとしては最低限早稲田大学に落ちたとしても国際認証を保有している大学院に通ってください。なお、国際認証としてプレゼンスがあるのは現状EQUIS、AMBA、AACSB だけであり、それ以外は意味がないと思っていただけるとよいかと思います。
国際認証を保有している大学のMBAは、今後大幅な需要の高まりにより授業料が急激に上がる可能性を秘めているくらい、ポテンシャルが高いです。日本はプレゼンスのある国際認証を持っているはずのMBAが安価で受けられる数少ない国です。