MBA生と解くケーススタディ例題 第一弾:「何が悪かったのか」?

Naoto

こんにちは、リスキリング図書室のナオトです。今回は私とケーススタディを読み、質問に回答する、いわばMBAの授業を一緒に体感しましょう。

ケーススタディとは、架空の企業に対する文献を読み、議論・勉強するためのコンテンツです。主にMBAの授業で用いられています。先生がファシリテーターを行います。
なお、本メディアのケーススタディは著者のナオトが自分で考えています。

目次

以下、ケース(例題)に入っていきます

新進気鋭のコンサルティングファーム

APビジネス社はコンサルティングファーム。コンサルティングファームにしては珍しい、コンサルティングサービスの無料トライアルを設けたことで、中小企業からの支持を急激に獲得した新進気鋭のビジネスコンサルティング企業である。

主な収益モデルとして、1ヶ月の無料トライアル期間を経て、顧客が満足すれば有料契約する。

2023年上期は売上目標に対して95%程度の見込みとなっており、5%の未達だったことから売上を上げたい精神が全社的に強くなっている。

同社がコンサルティングサービスを安価かつ無料トライアルありで提供できる最大のミソが、AIを活用したサービスだ。同社は画像生成やコンテンツ作成といった下流工程から、経営戦略やリサーチまでChatGPTなどのAIを活用している。

しかし、同社は具体的にAIをどの工程に用いているのかを公開していない。公開していない理由は、競合他社が真似をしてしまうなどのリスクヘッジのためである。

もしノウハウがバレてしまうと、同社のプレゼンスが大きく損なわれてしまう可能性があるため、従業員に対しても秘密厳守が義務化されている。

コンサルティングと顧客

しかしながら、コンサルティングサービスは必ずしも効果が出るわけではない。場合によってはコンサルティング内容以外の外部要因によって、クライアントのビジネスが悪化することもありうる。

その場合に顧客はAIが活用されている事自体は認知しているため、「AIで手抜きしているんじゃないの?」とAIを疑うことが多い。

もしくは、AIが提案した部分はどこなのかを気にしたり、説明責任を追求してくる顧客が度々発生する。今回、そのような顧客が発生してしまった。顧客1のプロフィールは下記。

月単価¥50,000(平均は¥300,000とする)
業界雑貨・輸入小物
事業規模個人事業主の法人成りケース
ステータス無料トライアル後2週間経過

コンサルティングはすぐに効果が出るものではないが、サービス開始後翌日から、顧客から売上がすぐに上がらないことに対してクレームが来始めた。

翌日だけではなく、連日同顧客から数百文字に渡るAIに関する不信感から、AIがどこを担当したのかなどの質問がチャットツールで来ていた。

売上目標が未達だった営業担当者Aは「顧客にトライアルを通過して有料化してほしい」という事業目標へのコミットや、興味をもってトライアルを始めてくれた顧客への良心から、連日同様に数百〜千文字でチャットの返信を行っていた。

クライアント対応は正しかったのか?

本サービスの1ヶ月あたりリード数は50~60件と多くないため、担当者Aはなるべく1件も顧客をやめさせたくないという思いを持っていた。

しかし、営業チームは少ない人数で多くのクライアントを捌いている。

担当者Aは半分クレームと化した顧客1の連日のチャット文章の返信対応に追われ(他にも似たような顧客が数件いたため、少なくとも数時間かかっていることを認識)、逆に優先度の高い顧客への対応がおざなりになっていた。

そのことを見かねた営業責任者Bは、「AIが行っているコンサルティングの詳細は企業秘密であり顧客には教えてはならない」「優先度の高い顧客への対応がおざなりになっている」と担当者Aにフィードバックを返した。

さらに、担当者Aに代わってBが、顧客1には「弊社都合で大変申し訳無いが、AIの細かい提案内容・動作内容は企業秘密のためお答えできず、以後同様のご質問をいただけても回答できない場合がある。」と返信したところ、以後顧客からの質問はピタッと止まった。

その後顧客1は有料化せずに、無料トライアル終了後にやめてしまった。有料化しなかった要因は顧客いわく、AIのコンサルティングにより思っていたほど売上が改善しなかったからとのこと。

後日、営業責任者Bは別の営業リーダーCから、「俺の取ってきた顧客をなぜ失注させたのか。営業活動は大変なのだから、顧客は1人1人向き合って大切にしろ」と叱責をうけることとなる。

Question & Takeaways 考えてみよう!

このケースで営業担当者Aと営業責任者B、別の営業リーダーC、誰が正しかった?その理由は?

正しかったとしたら何が根拠?逆に間違っているとしたらどういった理由で間違っている?

ディスカッション:10分程度

Naoto

あなたは誰が間違っていると思いますか?

ケーススタディの回答!

Naoto

前提として、ケーススタディには絶対的な解はありません。しかしながら、ひとまず作成した私として解答を書いておきます。

解答:Bが正しかった。AとCは完全に間違っている。

解説・ポイント

考えるポイントは何だったのか、見ていきましょう!

サービスの詳細仕様など、企業秘密的な事項は顧客には教えてはならない

禁止事項は顧客や営業に対する良心であっても遵守せよ。企業秘密が漏れたことによる損失は計り知れない。損失をきたす要因は徹底して回避せよ。禁止事項を破るのは顧客を大切にする行為ではない。

売上目標が未達だった担当者Aは「顧客に有料契約をしてほしい」という事業目標へのコミット逆に優先度の高い顧客への対応がおざなりになっていた

→優良顧客とのお付き合いとクレーマーへの対応、どちらがより優先度が高いのかを常に天秤にかけよ 全員に平等に接している暇はない。利益の出る顧客から順に利益を享受せよ。

顧客の不満の理由が何なのかを顧客のアクションのみで一元的に判断せず、顧客を注意深く観測して追求せよ同社の経営戦略は中小企業を少人数でたくさん持つビジネスモデルである。

今回、顧客が何かしらへの不満からサービスへの詳細を問い合わせてきた理由の背景を考えたい。

その際に、売上などの効果が出ていなかったことから、サービス内容に不信感を抱いて詳細を問い合わせてきていたのかもしれない。ただクレームに対応する(火消し)ことが有料化につながるわけではない点に注意せよ。

どうしても有料化させたかった場合は、担当者A側で効果改善につながる提案か、適切な期待値調整をすべきだった。しかし平均売上の1/6の顧客であること、また何かあるとすぐにクレーム化してコストが掛かることを考えると、リソース次第では力を入れないほうが良いという判断をするほうがより正解である。

前提として、中小企業に対するコンサルティングファームとして成長しているが、中小企業であることから1社あたりの単価(コンサルFee)が高くない。よって1担当者が抱える案件数を稼げない状態が課題である。

このとき、CはなんとしてもAに対して顧客の有料契約を遂行するよう迫っているが、これは会社が禁止している事項を間接的に幇助してしまっている。よってCも特大ミスをしていると考えてOK。

Naoto

限られたリソースの中では顧客へのリソース調整が必要です。また、企業秘密は何があっても教えてはいけないというケースでした!

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監修者

リスキリング図書室 オーナー スズキナオトのアバター リスキリング図書室 オーナー スズキナオト リスキリング図書室 オーナー

早稲田大学大学院 経営管理研究科修了(MBA)
学生時代に複数資格を取得し大手通信会社へ就職、その後大手IT企業に転職。
学び続けることの重要性や社会人大学院の体験談を綴る。

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